エコーネットコンソーシアムでは、理事会直下の「ECHONET 2.0実現に向けた課題検討WG」にて、2022年度に策定したECHONET 2.0普及に向けた新ロードマップに沿った活動を推進し、ECHONET 2.0戦略指針に沿った検討を進め、進捗を2024年2月のフォーラム及び3月のシンポジウムで発表した。具体的には、ECHONET Lite対象機器の拡大とシステム全体の信頼性担保方法の検討、ECHONET 2.0のサービス事例増加に向けたユースケース検討、ECHONET 2.0の普及施策と事業への展開のための制度設計に関する検討を進めた。
信頼性担保方法の検討としては、ECHONET Lite Web APIによるマルチベンダー機器接続の実現性を示すべく、デモシステムを構築して、CEATEC等での展示を行った。ユースケース検討においては、イエナカデータ連携基盤との連携、スマートホームに加え、ECHONET Lite対応機器の一層の普及が見込めるDRreadyを題材とし、ECHONET Lite Web APIを活用したユースケース検討や認証制度の検討を進めた。また、「ECHONET Lite Web API ガイドラインDR関連サービス仕様Version 1.0.0」を一般公開するとともに、日本電機工業会(JEMA)VPP分科会と連携して「VPPにおける需要家エネルギーリソースの活用に関するガイドライン」第2版に、需要家リソースをVPP制御する際のAPIの適用例として検討した内容を記載した。
さらに、従来から進めている国内外への普及促進活動、国際標準化活動、ECHONET Lite AIF認証制度の継続運用活動、ECHONET Lite規格の新規策定および改訂活動等も継続的に推進した。
たとえば、ECHONET機器オブジェクト詳細規定Release R において、機器エラー標準化に関わるプロパティに関して拡張された、「蓄電池クラス」、「住宅用太陽光発電クラス」、「電気自動車充放電器クラス」のそれぞれに対応したアプリケーション通信インタフェース仕様書を更新した。そして、「低圧スマート電力量メータクラス」の改訂、「双方向対応高圧スマート電力量メータクラス」、「周波数制御クラス」を新規に追加したECHONET機器オブジェクト詳細規定Release Rを一般公開した。また、「低圧スマート電力量メータ・コントローラ間アプリケーション通信インタフェース仕様書 Ver.1.10」と、「双方向対応高圧スマート電力量メータ・コントローラ間アプリケーション通信インタフェース仕様書 Ver.1.00」を一般公開した。
国内の普及促進活動では、JEMA、住宅生産団体連合会(住団連)、電子情報技術産業協会(JEITA)等との連携を引き続き強化すると共に、展示会関連ではCEATEC2023やENEX2024(神奈川工科大学と共同)に出展し、エコーネットコンソーシアムのPR活動を積極的に推進した。JEITAとの連携活動の成果として石川県能美市のデジタル田園都市国家構想IT基盤へのECHONET Lite Web APIの導入が決まり、JEITAとエコーネットコンソーシアムの両団体で共同広報発表を行った。海外の普及促進活動では、また台湾を視察し、日台スマートエネルギーセミナーでの講演を行うと共に、関連企業・団体とECHONET 2.0の普及に向けた意見交換を行った。また、IFA 2023、Energy Taiwan及びCES 2024を視察し、海外の技術動向を調査した。
国際標準化活動では、経済産業省の国際標準開発事業(国プロ)を受託した神奈川工科大学(KAIT)と協力して、「蓄電池-HEMSコントローラ間AIF仕様」の規格化活動を推進し、ISO/IEC 14543-4-302として2023年4月にIS化を達成した。
ECHONET Lite AIF認証制度の継続運用活動では、今年度は新たにECHONET Lite認証65件、ECHONET Lite AIF認証99件(コントローラ40件、機器59件)を登録した。その結果、累計認証件数は、ECHONET Lite認証は1,002件、ECHONET Lite AIF認証は902件(コントローラ474件、機器428件)となった。
これらの活動により、ECHONET Lite認証済み製品の出荷台数は累計1億4,981万台になった。
エコーネットコンソーシアムの今年度の活動としては、カーボンニュートラルやデジタル化社会の実現に向けて、需要家サイドに1億3,879万台を超える規模まで普及が進んだECHONET Lite対応機器について、更なる充実・拡張を目指していくこと、さらに、ECHONET Lite対応機器を活用したクラウドサービスの実現にむけて、DRready対応や認証制度の構築など、ECHONET 2.0関連の活動を関連団体とも幅広く連携して進めていくことを大きな柱とする。
普及が進むECHONET Lite対応機器を活用した幅広い分野のデジタル化施策やデータの利活用と、ECHONET Lite Web APIを用いたクラウドでの連携策としての重要な取り組みとして、政府が進めるDRready化の促進に向けた対応、検討に取り組む。すなわち、再エネ拡大のための基盤となるディマンドリスポンス(DR)の重要性が高まる中、給湯器や蓄電池をはじめとする需要家リソースのDRready化を促進することで電力需要の最適化による省エネを実現し、ECHONET Lite対応機器のより一層の活用が見込める。これら機器をDRや最適制御に対応させるとともに、エネルギーサービスの相互運用性確保のため、ECHONET Lite Web APIを用いたシステムの提案や実証などの社会実装に向けた検討を、日本電機工業会(JEMA)などとも連携しながら活動を進め、DRreadyに対応したECHONET Lite Web APIの認証制度を構築を目指す。
JEMA、CHAdeMO協議会、住宅生産団体連合会(住団連)などの関連団体及び会員との連携を通じ、国内外普及活動、ECHONET Lite規格およびAIF(アプリケーション通信インタフェース)規格の新規策定と改訂作業などについて、市場からの要望を聞きながら改善に取り組み、今後のIoT対応のための技術検討も継続して実施していく。これに加え、市場に多数存在するECHONET Lite対応機器を活かすため、他の通信規格からブリッジを介してECHONET Lite対応機器と連携する例を整理したホワイトペーパーを策定する。
さらに、ECHONET 2.0については、普及に向けた新ロードマップおよびECHONET 2.0戦略指針に沿って、秩序ある協創空間の実現に向けた検討を引き続き推進する。電子情報技術産業協会(JEITA)と共同で設立した新サービス創造データ連携基盤検討会や、エコーネットコンソーシアムメンバーが参加しているJEMAの分科会など関係団体との連携により幅広い視点での議論を通じて検討を進める。システム全体の信頼性担保方法の実証環境について大学機関やJEITAと連携して取り組むとともに、スマートホームや、2026年に開始が検討されている需給調整市場への低圧リソース群の対応など、多様なWeb空間上のサービスについても、引き続きユースケースを設定し詳細検討を行う。
また、普及活動としては、これらの活動内容をCEATECやENEXなどの各種展示会やイベントなどに展開するとともに、ホームページやダイレクトメールなどを活用し、広く認知いただくよう活動する。特に、幅広い課題の解決のためのデジタル化やカーボンニュートラル実現に向けて、制度設計を進めている関係省庁や学識経験者にも積極的に提案やアピールを行う。そして、エコーネットコンソーシアムの成果が、関連する制度に織り込まれることを通じて、社会課題解決に貢献することを目指す。その活動においては、ECHONET 2.0関連のサービス普及に向けて、エコーネットコンソーシアムメンバー、非会員のサービス事業者や他団体メンバーとの意見交換の場としてECHONETワークショップなどを開催し、個々のサービス実現における共通的な課題の共有と、標準規格で対応すべき解決策を模索する。
以上のように本年度もECHONET Lite規格を中心とした多様な活動に取り組む。
一方、これまで規格の普及に軸足を置いてきたエコーネットコンソーシアムの財政状況については赤字傾向が続いている。国内外の活発な動向を踏まえ、今年度以降もECHONET LiteとECHONET Lite Web APIのそれぞれに投資が必要な状況であり、引き続き会員各位の期待に沿うため、2025年度の会費の見直しを実施する。また、ECHONET Lite及びAIF認証制度についても、ZEH関連など補助金要件に関連したホームページの維持・管理費用が増加していることもあり、認証制度の継続的及び安定的な運営のため、認証登録費用の見直しを検討し、2024年10月の改訂を目指す。
これらの活動を通して、エコーネットコンソーシアムは、ECHONET Lite規格の普及とホームネットワークおよびIoT市場の拡大に向けた政府や国内外業界団体、および会員企業からの協力要請に応じると共に、活動を実行する永続的な運営基盤を構築するために、組織と運営体制を継続的に見直しながら、効率的な運営を進めていく。